雑感(2014年3月12日) [なんか良いことないかな~]

嫌な国だなと思わんでもない。

「想定外」いつ頃から流行り始めた言葉なのだろう?2005年ライブドアのホリエモンが「想定内」で流行語大賞を受賞した頃か。どうあれ、人を小馬鹿にした言葉に聞こえてしまう。

ノンフィクション作家の柳田邦男さんの本に寄れば

「起こり得る可能性があるものは、確率は低くても現実には必ず起こる」

「それが災害・事故の掟だ。」災害対策の要諦は、この『掟』に対して、いかに真摯に取り組んだかが重要な命題である。

起こる可能性がある事態の中で、確率の低いものについては除外して、経済的に対応可能なところの上限で線引きをして、それを上回る地震・津波が発生した時には「想定外」という一言で弁明する。これが日本の行政、産業界、大半の技術者の長年に渡る思考の枠組みだったのだ。

2006年衆議院内閣委員会で吉井英勝(共産党)さんが非常用電源喪失に際し、どういう事態が想定されるかとの問いに原子力委員長の鈴木篤之氏は同一敷地内に複数のプラントがあるので他のプラントと融通しあうなど多角的な対応を事業者に求めていると答えている。2007年2月の浜岡原発訴訟では原発の非常用電源がすべてダウンした場合の想定の有無を原告に問われ、東大教授班目春樹は「非常用ディーゼル2個の破断も考えましょう、とか言ってると設計は出来ない。ちょっと可能性があるものを組み合わせて行くと、ものなんて絶対作れません」と述べている。福島原発事故発生時の原子力委員会委員長がこのような考え方の人であったというのは悲しい事だ。全てが原子力ムラと呼ばれる閉ざされた世界。造る側の専門家は事故・災害の専門家ではない事の証だ。しかし「想定外」の線引きは、造る側の専門家と行政によって強行されてしまう。

システム辺縁事故とは非常に複雑で高度な技術を駆使したシステムにおいては、システム中心部は安全確保に万全の配慮をした設計にしてあるのだが、システムのいわば縁と言うべきところで、まさかと思うような人的ミス(ヒューマンエラー)や工事ミスや設計上の手落ちなどが生じやすく、それが引き金となってシステム全体を破局に陥れるような大事故を起こしてしまうケースを指している。

1985年8月群馬県御巣鷹山に墜落したジャンボ機の事故原因は、1978年伊丹空港着陸の際に尻餅事故を起こし機体後方圧力隔壁の下部を破損。ボーイング社から修理チームを呼び、壊れた圧力隔壁の下半分を切断し、新しい半腕型を取り付ける事にした。その工事が強度を確保するための当て板の付け方、鋲の打ち方がずさんであったため、鋲の穴からヒビ割れが生じ、それが金属疲労によって広がり破壊に至った事が残骸調査で分かっている。日本航空の技術陣は修理検収の際に、修理隔壁がすでにペンキで塗り上げられていたとは云え、修理現場で中間検査を怠るべきではなかったのだ。まさかボーイングのプロ集団に限ってという過信が招いたチェックミスである。

107名の死者、500人を超える重軽傷者を発生させたJR福知山線の尼崎でマンションに突入した脱線事故。本来70kmに減速して運行すべきところを運転士がどうしていたのかわからぬが116kmで進入した為に脱線。この事故で気の毒であったのは例え運転士が居眠りをし高速で突入してきても自動で速度を抑えるATSがあれば防げたかもしれない事だ。会社側は「まさか運転士が」と驚く体を繕うのが精一杯で所詮は"人頼み"であり「安全」に支払うコストはモッタイナイという企業倫理。JRという企業の体質なのか、同じ事はJR北海道にも云える。国を牽引してきたはずのぽっぽやも現場上がりの叩き上げの技術者は去り、モチベーションの低い無責任な技術者(既に技術者倫理を逸脱しとりますし、脇に技術者がいれば、その人の指示に従い作業できるレベルの作業員と言わざるを得ず)、それでもまだ人としての意識があれば救われもするが、その危険性を認識出来ないと云うのは到底許されざる行為だろう。

先日、マルハニチロで薬物混入があったが、薬物を混入できる機会を持てる衛生管理とは如何なものか?どのように食の安全を守られているのか。その後、音沙汰はないが他の大手は大丈夫なのだろうか?

誰もがそうだとは言わぬが、結果だけ見れば、関係者の誰もが見て見ぬ振りをしているように見えてしまうのは何故だろう。

2010年10月20日、21日に中部浜岡原発で行われた防災訓練は、福島で起きた全電源停止による冷却機能停止を想定。訓練の結末は最後に電源が勝手に復活して助かるというもの!そんなバカな(>_<) 訓練の見学者に対しては「電源が喪失することはありません」との回答であり、内部の関係者に対しては不要な不安を与えないための配慮と答えている。そんなもの訓練ではなくセレモニーに過ぎない。

東日本大震災の起こる、わずかに半年前の出来事。もちろん自然災害に勝てるとは思っていない。設計当初想定した2〜3倍の高さで襲ってきた津波により非常用のディーゼル発電機は飲み込まれてしまった。

「想定外」こんな言葉で片付けられるのは悲しすぎる。


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